「Magazine for City boys」をスローガンとしてリニューアルをしたPOPEYE。このブログでは“どこかにいるはず”のシティボーイ“を捜索。彼らの地元「ホームタウン」を巡りながらそれぞれの“シティボーイらしさ”をリサーチしていきます。
例えば、スケーターの履くVANS、バスケットマンのジャージや動き方がかっこよく見えるのは、それぞれに真似のできないスタイルがあるからではないでしょうか?
何でも似合うことより、その人にしかないスタイルがあることこそ“シティボーイらしい”と思うのです。
このブログでは、そんな独自の持ち味を持ったシティボーイを探して行きます!
「シティボーイを探せ!」毎月更新!
今回のシティボーイは、大学進学を機に青森は弘前から上京した山口さん。
現在は「<エンジニアドガーメンツ>のデザイナー鈴木大器さんがいるNYへ行く!」という夢を叶えるため、大学を休学してラーメン二郎千住大橋駅前店でアルバイトの毎日。
今回は彼の第二のホームタウン、北千住の街を巡ります。
「ファッションと鈴木大器さんが好き!」
待ち合わせは、彼の行きつけの中華料理屋で。まずはご挨拶に、彼の大好物の餃子を食べながら、大好きな洋服について聞きました。
「洋服に興味を持ったのは高校生のとき、地元にあるセレクトショップで<エンジニアド ガーメンツ>の洋服を手に取ったのがはじまりです。当時は洋服にも詳しくないし、ただただ感覚的にかっこいいと思って着ていました。お小遣いのほとんどは洋服に費やしていましたね」
写真は山口さんが持っている<エンジニアド ガーメンツ>の中でも特にお気に入りのアイテムたち。緑のカーゴパンツは彼がいつもバイト中に履いている“二郎着”なんだとか。
「<エンジニアド ガーメンツ>について調べていて、そこで鈴木大器さんを知りました。そうしたら、なんと鈴木さんは僕と同じ弘前の生まれだったんです。ずっと青森から出たいと考えていたので、同じ出身に世界で活躍されている人がいるんだと知って、とても勇気づけられました」
それでも当時は、洋服は「趣味」の一つで「将来の夢」ではなかったそう。
「もともとバンドを組んで音楽に興味を持っていたのもあり、自然な流れで東京藝術大学音楽学部に入学しました。でも、いざ大学に入って音楽を勉強してみると、これじゃない、って思ったんです。それで今年の夏、一度立ち止まって将来何をしたいのか考えることにしました」
就職活動を意識し始める大学3年生。どんなに強い意志を持っている人でも、周りを気にせず、一度立ち止まるには勇気がいる。たくさんの苦労があったはずだけど、覚悟を決めた山口さんの顔はとっても晴れやか。
「じっくり考えて、やっぱり自分が頑張れるのは洋服だと思いました。それに憧れの鈴木さんは最初からデザイナーをされていたのではなく、バイヤーをしてその流れで今に至った経緯がある。だから服づくりとは関係のない勉強をしてきた今からでも服が作れるんだ、間に合うんだ、と思ったんです」
ファッションを趣味から職業にしたいと考えるようになり、さらに服に対して真剣に考えるようになった山口さん。 場所を彼の行きつけの古着屋さんに移し、もっと洋服のことについて聞きました。
「古着屋 SVKXR」
「ここは北千住で唯一服を買うお店です。商品の状態も値段も文句なし! 先日は、ほとんど新品の<パタゴニア>のフリースが1万円以下で売られていたんですよ。以前は古着にはあまり縁がなかったんです。でも、鈴木さんがなにかのインタビューで『いい服とはどんなに安くてもいいから一つ絶対にかっこいいと思えるポイントがある服』とおしゃっていて、それからは古着やノーブランドも手に取るようになったんです。最近はこういうところで服を発掘するのが楽しいです」
この日山口さんが気になっていたのはハニカム織りのサーマルシャツ。
「寒くなってきたので<モーガンミルズ>のサーマルにお世話になっています。最近はメイドインUSAじゃなくなっているので、デッドストックのものがないか常に探しています。ちなみに今日も着ていますよ。ハニカム織は本当にあたたかいんです!」
気になった洋服をひとつひとつ手に取って、真剣に見つめる山口さん。最近は素材や洋服のつくりについて興味があるそう。
「鈴木さんの服に対する考え方やこだわりを知る中で自分の洋服を選ぶ基準も変わりました。バイヤーをずっとされていた鈴木さんが素材について詳しいということもあり、僕も素材に興味を持つようになったんです」
毎日忙しいバイト生活の山口さん。時間を無駄にするまい、とお買い物のときも勉強モード。スタッフの方に根掘り葉掘り洋服の話を聞いていました。
「北千住散歩」
古着発掘に全力を尽くしすぎたのか、少々お疲れの様子。近所のお団子屋さんで、少し休憩して、北千住をお散歩することに。
『かどやの槍かけだんご』
「ここのお団子はこの辺りの人には欠かせないおやつで、北千住名物ですよ。最近古い店舗を建て直したところです。以前の風情ある店構えも好きでしたが、こうやって形を変えながらもお店が続いてくれるのは嬉しいです。今日はやきだんご3本にあんだんご2本にしようかな」
山口さんは本当においしそうに食べる!
ちなみに山口さんはここの若旦那さんと飲み友達。お酒が好きな山口さんは飲み屋さんでお友達ができることが多いんだとか。ここだけでなく、行く先々で色々な年齢の方に声をかけられていました。地元の人とのコミュニケーションを大事にできるのはかっこいい。
『手造り餃子とラーメンの店 七十番』
次に案内してくれたのは彼がよく行くラーメン屋『七十番』。
「僕のなかで注目のラーメン屋さんです。先日メンマを褒めたらお店の方が次々とメンマを出してくれました。千住一のホスピタリティがここにはあります!」
ラーメン二郎で働く山口さん。やはり北千住ツアーにラーメン屋は必須のようです。
「僕はラーメンが大好きで、今働いている『ラーメン二郎千住大橋駅前店』の常連客だったんです。とにかくNYに行くためにお金をためなきゃと考えていたので、終日働けるラーメン二郎の助手になりたいと思って店主に頼み込みました。今でもほとんど毎日二郎を食べています!」
洋服に関わる仕事がしたいと思ったら、洋服屋でバイトをするのが普通だけど山口さんはお金を貯めて直接憧れの人に会いにいく直球勝負スタイル。鈴木さんが作ったカーゴパンツを履いて働けば、毎日の仕事にも精が出るね!
『大黒湯』
「銭湯ファンの間でキングオブ銭湯と言われている銭湯です。大きくて造りが立派な屋根は北千住一番の撮影スポット。ここはよく二郎の店主と店を閉まったあとに来るんです」
週6回ラーメン二郎で働いている山口さんは店主さんと家族同然のつきあい。
「お店が休みの日曜も店主と家族ぐるみで過ごしています。今度、店主の娘さんのお遊戯会にカメラマンとして出席するんです!」
『boqueron / カリーライス山』
「以前バイトをしていたバルです。二郎で本格的に働くようになって辞めてしまったんですが、今でもお店の人と仲良しです」
スタッフの方から「NYにはもう行けそうなの?がんばってね!」と応援される一コマも。
「こうやって気にかけて応援してくれるのはありがたいことです。ちなみにここ、僕がやめてからお昼の時間に『カリーライス山』と店名を変えてカレーランチをしているんです。お店の名前、僕が由来だったら嬉しいなあ」
そうだといいけど山口さん、たぶん、違う気がする!
「NYまであともう少し!」
北千住散歩の締めくくりは、行きつけの喫茶店『ムービー』へ。そこでは、週6回働いているラーメン二郎と、これからについての話に。
「ラーメン二郎で助手として働く人の多くは将来自分で二郎のお店を出したいと考えている人たちですが、僕は違うんです(笑)。でも店主は僕の夢を理解してくれていて、先日も友人のパタンナーさんを紹介してくれたんです。毎日働いている甲斐もあってNY行きも現実的になってきました。店主と辞める時期について話すんですが、冗談で『お前がやめたらもう助手は雇わないで一人でやる』と言ってくれて、ちょっと辞めるのが名残惜しい気持ちもあります」
「実は、まだどうやって鈴木さんに会いにいこうか決まってないんですよ。今のところアポなしでNYのネペンテスに行って『弟子にしてください!』と直談判するつもりなんです(笑)」
飾らずいつも自然体が魅力の山口さん。洋服屋ではバイトをせず、『夢の第一歩はまず鈴木さんに会うことから!』とシンプルな考えが彼らしい。
憧れの鈴木さんがいるNYまであともう少し。やる気も準備も問題ないけどNYに『二郎』がないことだけが、心配だ。
取材/文/写真/飯野僚子