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第35回 北沢書店 北澤一郎さん | ブログ | マガジンワールド

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profile: 1955年生まれ。18歳よりアルバイトとして北沢書店を手伝い、大学卒業とともに正式に入社。東京都千代田区神田神保町2-5 北沢ビル2F 03•3263•0011 11:00〜18:30、土12:00〜17:30 日・祝休 

「本が読みたいなあ」って思うときほど、面白い本が見つからなかったりするから不思議だよね。だったらいっそ街に出て、本選びのプロにおすすめを聞いてしまおう!

このブログでは、本が大好きな人たちのお店に行き、本を読むこと、探すこと(Diggin’ Books)の魅力を教えてもらいます。今月も張り切って行ってきます!

部屋に置いてある本というのはその人の人となりをあらわすものだ。いい本の置いてある部屋は、きっといい部屋に違いない。そんなことを考えたのは、神保町の老舗古書店、北沢書店を訪れたから。明治35年創業で、この本の街の中でも重鎮的存在。なんでも置いて楽しむ“ディスプレイ洋書”も販売しているらしい。さっそく、お店の3代目、一郎さんにお話を聞きました。



神保町交差点からほど近く、ビルの2階。ぎゅうぎゅうに洋書が置かれたクラシックな店内は、店というよりも誰かの書斎に来たみたい。ここは通常の古書のコーナー。



 

ラインナップは1500年代〜1800年代に出版された英語による文学、演劇、渡航記などの文化系の専門書が中心で、フランスやドイツ語で書かれたものも。『グレートギャツビー』を書いたフィッツジェラルドのように馴染みのある作家や、最近のビジュアルブック的な本に加えてアンティーク雑貨もあるから洋書はちょっと……って人や、英語に自信のない人でも存分に楽しめるよ。ロンドンをはじめ世界中で買い付けてきたもので埋め尽くされてる!


「初代の祖父が創業した当時は洋書専門店ではありませんでした。そもそも当時の書店の多くは新刊も古書も区別があまりなかったんです。しかし祖父は社交家で外国とも交流があったので、洋書の販売や外国への書籍の販売もしていました。洋書専門になったのは大学で英文学の助教授をしていた父が継いでから。自分の知識も活かし、戦後、外国の教養を広めるという風潮もあったので新刊書を中心に海外から英米の書籍を輸入して販売していました。そして2005年に古書専門店としてリニューアルし、現在に至ります」
写真下は1930年ごろに外国への通販のために店で発行していたカタログ! 当時は日本についての資料などを輸出していたんだとか。店には日本と世界の知識の架け橋をしていた名残が今でも残っています。

一郎さんが案内してくれたのは店の奥にある、得に貴重な本が並ぶコーナー。


数年前までは予約をしないと入れない部屋だったけど、今ではオープンスペースになっている。なんか、魔法使いの映画にでも出てきそう! 



「外国の視点で日本について書かれた本もたくさん置いています。日本が鎖国をやめた19世紀以降のものが多いですね。これは黒船襲来でおなじみのペリーが、日本への交渉の様子から日本の文化までをまとめた限られた階層向けの報告書です。挿絵はすべて版画になっていて、その緻密な美しさも見た目に楽しいです。この公衆浴場の絵はこの本の中でも有名で、混浴という文化にペリーは驚いたみたいです。こういう貴重な資料は私が外国に行って手に入れます。また、古くからひいきにしてくれる学者のお客様たちに『次に必要な方の手に渡れば』と託されることもあります」
歴史のある店だからこそ多くの人たちの信頼もある。でも、洋書をちゃんと読もうって思うとちょっとハードルが高い気がする。

そんな僕たちにも本をもっと楽しめる方法を教えてくれました。


「内容もそうですが、本そのものの存在もすごく大切ですよね。本革の表紙であったり、金を塗ったものであったり、昔の本は一般の人に向けたものというよりも政府関連の本が多かったので、装幀に内容はもちろんその国の当時の豊かさがデザインにも出ていると思います。装幀はその本の知性がにじみ出る、本を楽しむための重要な要素です。若い頃にアーノルド・ベネットという作家のエッセイで『本を読まなくても、本を置いた環境で生活するだけで良い教育になる』というような内容を見かけたんです。本を好きな人は『本は読むもの』という認識が大きいと思いますが、とくに古書は多くの人に読まれてその役割をしっかり果たしてきたもの。なのでただ物として見て楽しむのも十分意味があって、本にとっても幸せなことだと思います」
そんな思いから『北沢書店』では“ディスプレイ洋書”を10年ほど前から提案。

ディスプレイ洋書ってなんだ? 担当する一郎さんの奥様恵子さんと娘の里佳さんが案内してくれました。



「店内を出た廊下部分にディスプレイ洋書のコーナーがあります。ディスプレイ洋書はその名の通り、置いて楽しむ洋書です。モデルルームであったり、撮影の小物であったり、個人のお部屋に置くために購入されるお客さんもいます。ここに置かれている本は、メインの店頭にあるようなクラシックな本から最近の雑誌まで様々。レストランに置きたいという方には料理関連の本を、『こんな色味の部屋を作りたい!』という方には色によってご案内しています。古い店なので読むためではないディスプレイ用の本を探しに来たというのを恐縮される方もいるんですが、むしろ大歓迎なんです。気軽に話しかけていただきたいです!(笑)」

色ごとや雰囲気ごとにまとめられて見やすい! ここに置かれているディスプレイ用の本は他と何が違うんでしょう。
 

里佳さん「例えば装幀や状態はとても良いのにシリーズもので巻がすべて揃っていなかったりすると父が担当する店内での販売が難しかったりします。また、同じタイトルの本でも店内のものは初版、ディスプレイのものはそうではないものだったり。買い付けの際は装幀の美しさや風合いも厳しくチェックします。もちろん全てれっきとした本です。読み物としての役割を終え、ディスプレイとしてまたみなさんのそばに本が寄り添うのはとても嬉しい事です」

廊下のコーナー以外にも実は倉庫が。ディスプレイ洋書を探している人に気軽に案内してくれるよ。その在庫数なんと3万冊以上! 圧巻の眺めです。


恵子さん「映画の小道具などで使うときは1000〜2000冊などまとまった数が必要になるので、すぐに対応できるように常に在庫数を保つようにしています。先日海沿いで結婚式を挙げるという方が来てくれて、海をイメージした青い本をずらっと並べていてとっても綺麗でした。もちろん、ディスプレイ用といえどもデザインだけでなくて内容も自分を表現する大切な要素。目利きである主人のアドバイスを受けながらその人の個性を表現するために本のテーマもお客さんと考えながら選んでいます。本って慎ましい存在なので、自分の興味を主張しすぎずに表現することができますよね。部屋づくりにすごくぴったりなものだと思います」
洋書をディスプレイとして提案した元祖的店なだけあって、大規模な装飾にもしっかり対応してくれる。インテリアデザイナーなど、プロからの依頼も多いとか。僕たちだって気になる本をプロと一緒に実際に手にとって選んだら間違いないよね。

次にこの倉庫の中でもチェックしておきたい名物とも言える、何百年も前に出版された本を見せてくれました。これまた圧巻。



「1500年代〜1800年代の本は装飾がすごく美しいんです。革装は雰囲気も抜群で、一気におしゃれな空間をつくれますよ」
そういって見せてくれたのがスエード生地を表紙に使った1600年代の本。今ではこんな本なかなか作れない! 貴重な本をもうやって手にとれるのもいい経験。

というわけで今月もディグっていきます。
今回はディスプレイ洋書入門! がテーマ。

1st DIG『SOCKS Story』


古典的な本も豊富だけど、ビジュアルブックもおすすめ。これはアメリカンな靴下を収集した1冊で開いて飾ってもかわいいかも。キャッチーなタイトルっていうのもディスプレイ向き! 内容も楽しくて、普通に見入ってしまいそう。

2nd DIG 『At HOME with BOOKS』


まさに部屋と本がテーマの1冊。写真も綺麗でもちろんディスプレイとしてもいいけど、実際に世界中の本好きの部屋をパラパラと見て部屋づくりの参考にしてみるのもいいかも。大きい本棚のある部屋っていいよね。
こういう新刊同様の本も古書価格で手に入れられるのが嬉しい。なかには定価の半額以下のものもあるというから驚き。

 
3rd DIG『アメリカンペーパーブック』

「こちらはディスプレイ用ではないコーナーからですが、ヴィンテージのコミックもおすすめです。エンターテインメント的な内容のものが多いので、洋書を読むきっかけにもいいかもしれません」
簡易的なペーパーブックだから余計シワとかも入りやすくていい味出てます。たしかに、部屋に置いておいたら洋書にも挑戦してみたくなってくるかも。


本って読むためのものだけど、それを表現するために表紙のデザインだったり素材だったり、“器”にも工夫がつまってる。そうやってできたものだからこそ、好きな1冊を部屋に置いただけで自分の趣味を最大限に表現できる気がする。
どこかで「本棚を見ればその人がわかる」みたいな話を聞いたこともあるし、部屋づくりをするときにまずは本屋さんに行くっていうのも一つの手。
さらには洋書と100年以上向き合ってきたプロと一緒に選べば、デザインだけじゃなくて自分の興味にあったまだ見ぬ名作に出会えることもあるかも。
ディスプレイ洋書って“ジャケ買い”にも通ずるものがあって、超楽しいよ! 
 
お店の最新情報はtwitterとinstagramで! 

twitter: @kitazawa_books 一郎さんによる店内の本の紹介が見られるよ。洋書にはこんな本があるのか! って驚くかも。
instagram: @kitazawa_books   
facebook:@kitazawaboooks instagramとfaceboo恵子さん、里佳さんによるディスプレイ洋書の紹介で綺麗な装幀の本がたくさんで楽しい!

 
文・写真 飯野僚子

http://blog.magazineworld.jp/popeyeblog/29177/


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