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第29回 模索舎 榎本智至さん | ブログ | マガジンワールド

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profile:えのもと・さとし│大学卒業後、西陣織の営業職を経て、『模索舎』に入社。現在は神山進さんと共同で『模索舎』の運営を行っている。〒160-0022 東京都新宿区 新宿2-4-9 03-3352-3557 日曜日以外は11:00〜21:00 日曜日は12:00〜20:00

「さあ、本を読もう!」と思い立っても、そもそも良い本と出会う方法を知らなければ、すぐにスマホの世界に逆戻り。『Diggin’ Books』では、そんな僕たちが頼るべき本のプロが選ぶオススメの3冊をご紹介。早速どうぞ!

かつて『POPEYE』の編集者としてキャリアをスタートさせた都築響一さんが、昨年12月に新著『圏外編集者』を出した。そして、その発売記念トークイベントをいち早く開催していたのが『模索舎』という新宿の本屋さん。すこし古めかしいその名前が異様に引っかかって、いったいどんなところなのか知りたくなった。
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外から見るかぎり、おや、ここは古本屋さん? 中に入ると最近流行りの「余白を生かしたレイアウト」に逆行するぎゅうぎゅう詰めの本棚がお目見え。だけど、よくラインナップを眺めてみると、ここは新刊のみを扱うセレクト型の本屋さんのよう。店名といい、内観といい、興味がそそられるポイント満載の『模索舎』のことをもっと知るべく、店内奥で作業をしている榎本智至さんに話を聞いてみた。

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―お店を見るかぎり、かなり歴史が深そうですが……
「オープンしたのは45年前ですね。設立メンバーで初代代表の五味正彦さんは60年代に早稲田大学で学生運動をやっていて、学生運動のパンフレットを作ったのにどこも置いてくれないから、自分たちで本屋を作ろうと。当時は本屋さんと喫茶店が一緒になっていて、学生のたまり場だったようです。でもみんながあんまり長く居座るもんだから、回転が悪くて喫茶店が廃業になってしまった。それからはずっと本屋専業です」
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―名前の由来は?
「喫茶店は『スナック・シコシコ』、書店は『ズッコケ書房』と別々で名前がつけられていました。でも『ズッコケ書房』に関しては「こんな名前じゃ出版社に信頼してもらえない」と当時のメンバーからクレームが出て、紆余曲折を経て元々候補にあがっていた『模索舎』という名前に落ち着いたようです」

最近“ブックカフェ”という業態が増えているけれど、そのパイオニアが『模索舎』だったとは。ただ、今でも前述のようなイベントを数ヶ月に1回開催していて(場所は近くの喫茶店『ラバンデリア』を借りて行われることも)、今も“文化的サロン”の役割を果たし続けている。
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―『模索舎』に入った経緯は?
「僕は学生運動に参加していて、サブカルも好きで灰野敬二やアシッドマザーズテンプルみたいなミュージシャンを聴いていたから、自然とここに通うようになりました。大学卒業後はサラリーマンとして働いていたんですが、知り合いが『模索舎』から抜けるタイミングで『やってみないか』と。今は、もう1人の神山という者と2人で共同運営者という立場です」
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―政治以外に、サブカルというのも『模索舎』を語るうえで欠かせない要素なんですね。
「そうですね。ここは原則審査なしで少部数のミニコミを取り扱っているのも大きな特徴です。“伝えるために作られたもの”をそのまま流通させることを大切にしたくて。あとは、多様性に対して寛容であること。政治に限らず、本のラインナップがどこかに偏るということは極力避けていますね。ミニコミの入荷量って昔から変わらないし、『野宿野郎』(かとうちあき)や『むだにびっくり』(田房永子)など、面白いミニコミであればちゃんと売れるんですよ」
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そんな『模索舎』がいまオススメする3冊をここでご紹介。早速カッティングエッジな1冊が飛び出すかと思ったら、何とも可愛らしい表紙の本(というかノート)が。
1st DIG『Curry Note』宮崎希沙
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「『模索舎』の二階に僕の知人の先輩が始めた『草枕』というカレー屋さんが入っているんですが、スタッフの宮崎希沙さんが毎年作っているのが“カレーノート”。その年に彼女がプライベートで通ったカレー屋さんを紹介していて、時に話が逸れまくるテキストの中毒性がかなり高い。彼女の本職はデザイナーなので、レイアウトも綺麗。これをわざわざ買いに来る人もいるくらい人気の1冊です。ちなみに、『模索舎』で本を買ったレシートを持って行くと、『草枕』のトッピングが1品無料になる。この制度、まだ定着していないから、この機会に広めたい!(笑)」

はい、というわけでこれを読んでいる皆さん、模索舎で本を買って『草枕』のカレーを食べるというコースを2016年に1回はやってみて! 「なすチキン」にチーズトッピングが鉄板で美味しい。
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お次は模索舎のルーツを感じさせる2015年のベストセラー。
2st DIG『革共同政治局の敗北1975〜2014 あるいは中核派の崩壊』水谷 保孝/岸 宏一
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「これは、かつて中核派として30年間活動していた2人が内部闘争で追い出されたあとに、中核派とは何だったのかを振り返るという内容。こういう類の本にはたいてい自分たちに都合の良いことしか書かれていないのですが、ここにはきちんと自己批判が含まれている。暴力で人を屈服させるようなことをしてきた人たちだけど、当事者の目線を知ることは大切だと思います。こういう本がバンバン売れるのはうちらしいですね」

3rd DIG『Novia Novia Magazine』
「店があるのが新宿二丁目だから、性的マイノリティ向けの本の需要は大きい。LGBT関連のミニコミも入荷するとすぐに売れてしまいます。これは“LGBTの人たちがどのような生活を送っているのか”を紹介しているライフスタイル雑誌。個人的にも特に注目していたトピックの1つですね」
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2015年はLGBTというワードが一気に定着した年だったけれど、このように本屋さんでLGBT関連の雑誌やZINEが当たり前のように陳列されているのを目の当たりにすると、時代は良い方向に変わりつつあるんだ、ということを実感する。

実は2010年に存続の危機に立たされたという『模索舎』。その時はファンのカンパによって何とか持ちこたえた。
「模索舎を必要とする人がいるかぎりは続けていきたい。今はそれだけを考えています。特に本の未来に関して悲観的になったり、逆に楽観的になったりすることもありません」
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「学生運動が発端となってできた本屋さん」というだけで過激な印象を抱きがちだけど、ここはサブカルチャーの宝庫。本だけでなくTシャツやトートバッグも売っているから、一度冒険だと思って足を運んでみてほしい。ここでなら、今まで知らなかった世界の扉が開ける、かも。
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模索舎HP
text:長畑宏明

http://blog.magazineworld.jp/popeyeblog/28649/


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