夢中なことがあったり、叶えたい目標があったり、誰にも真似できない自分だけの“何か”を持ってる人ってかっこいい。
シティボーイってどんな人のことを言うの!? という問いの正解は決して一つではないけど、彼らが共通して持っているのは、そういう自分の興味に対する強いこだわりなのではないでしょうか。
このブログでは、毎回1人のシティボーイに密着取材。彼らのホームタウンを巡りながら、シティボーイの実態を調査していきます。
今月のシティボーイは、都立大学に住むカメラマンの阿部裕介さん。2014年に大学を卒業後、すぐにカメラマンとして活動を始めた彼は、現在ファッションブランドのカタログや役者さんのポートレート写真、ドキュメンタリーの撮影を中心に活躍しています。
今回は彼の自宅にお邪魔して、お話を聞きました!
『お部屋案内』
まずは今年越してきた、彼のアトリエでもある自宅へ。
阿部さんが暮らすのは、味のある古道具と植物に囲まれた温かい雰囲気の部屋。居心地がとってもいい!
「去年ドイツに行ったときに、誰もが住環境にこだわっているのを見て、いいなと思ったんです。家具は近所のリサイクルショップで掘り出すことがほとんどですが、偶然行った街で見つけることもありますよ! 花は色々な種類を組み合わせます。色のバランスを考える練習になればと思い、常に絶やさないようにしているんです」
花瓶を置いたテーブルは矢部の米軍基地近くで売られていた、アメリカ軍の作戦ボードとして使われていたもの! 渋い。
次に見せてくれたのは、学芸大学のリサイクルショップで偶然見つけたという棚。これまたいい味が出ています。中には阿部さんの宝物である10台以上ものカメラたちが。
「最初にカメラを買ったきっかけは、大学2年生のときにしたヨーロッパとインドの一人旅。そのくらいから色々と集めるようになりました。旅の間、写真を撮って行くことがとても楽しくて。その旅の途中でパリに行った時、当時<メゾン・マルジェラ>のデザイナーをしていたKei Toyoshimaさんに出会ったんです。彼に写真を褒めていただいて、そのときから写真家という仕事を意識するようになりました」
旅には思いもよらない偶然の出会いがあるから面白い。旅はカメラと阿部さんをさらに引き寄せていきます。
「Keiさんに出会った後に訪れたインドでは、現地で怪我をしてしまい色々困っていました。そのときに世話をしてくれた日本人の方のご家族が、帰国後にフィルムのカメラをたくさん持っていることを教えてくれて、それを貸してくださったんです。そこでフィルムカメラの使い方を勉強する機会ができたり、その後もカメラマンを勧めてくれたKeiさんが色々な機会をくれたり、チャンスに恵まれて写真を続けられました」
一人旅から、こんなチャンスが巡ってくるなんてなかなかない! その偶然の機会を大切にして、カメラを独学で勉強したり、ファッションショーの撮影という大きな舞台に飛び込んだりできた阿部さんは、素直にすごいと思う。
『ポートレイト』
現在はファッション写真を中心に撮影している彼。その活動と一緒に、写真をはじめたときからずっと変わらずに好きなのが、人物をありのままに撮るポートレイト。
「最初の旅でホームステイをして、そこでホストファミリーを撮ったのが、ポートレイトを好きになったきっかけです。人だけじゃなくて、写真に写り込んだ背景やお菓子の箱を見て当時の記憶が一気に蘇ったり、タイムマシンのようで、すごく面白いんです」
彼がポートレイトを撮る時に、よく使っているのがこの4台のフィルムカメラ。
「最初は旅先だから充電がいらいないものをと思って使っていたフィルムカメラですが、今ではフィルムの種類を選んで、限られた枚数の中で撮影をして、プリントをするという手間が、被写体にプレゼントを用意しているようですごく好きなんです」
中でも、この『4×5(シノゴ)』と呼ばれる大判のカメラは、フィルムが板状になっていて、裏表で2枚しか撮れないんだとか。さらに特別感が増すし、今ではこんなに大きなカメラで撮影されるなんてこともないから、撮られている時間も思い出になりそう。ちなみに持つとすっごく重かった!!
『ネパールの支援』
そしてもう一つ、彼が今力を入れているのが今年5月に起きたネパールでの震災の支援。ここは学生時代に旅で訪れた思い入れのある国で、今後も定期的に現地へ行って現状を伝えていきたいのだとか。
「小さな村には支援が行き切らないことも多く、物資を直接届ける活動をしています。でもそれだけでなく、僕は今カメラマンだから、現地の様子を伝えるということも大切にしています。山奥の村では、写真を撮るのはたいがいiphoneです。SNSにアップすると、ファッションの撮影を通じて知り合った方が興味を持ってくれたりするんです。モデルさんや、メディアで物作りをする人は忙しくて、中々世界中を自由に見ることはできないから、こうやって自分の足を使って周りの人に知らない世界を伝える活動も続けたいですね」
写真は阿部さんが現地で撮った現地の笑顔の子どもたち。苦しい状況の中でも生活は続くから、笑顔になる瞬間だってもちろんある。本当にその場所にいかないとわからないことを伝えようとしているんだなと実感。
『関ちゃん家』
最後に場所を移して案内してくれたのは、阿部さんの大好きな店主“関ちゃん”が営む行きつけの『居酒屋 関川』。
都立大学にお店を出して10年、彼に会いにいつも地元のおじちゃんおばちゃんが店に集まります。
阿部さんは、こういった常連さんに愛される居酒屋さんに入って、会話をしながら店主さんの写真を撮るのが好きなんだとか。中でもここは、彼にとって特別なお店。
「最初は入りづらいなと思ったけど、今では一人でも来るくらい居心地のいい店で、ここで大好物の唐揚げを食べて元気を出しています。関ちゃんは注文しても、勝手におすすめの違う料理を頼まされたりして、本当にパワフルですごいおやじ。こちらもお店にくる前に、気合いを入れて臨みます(笑)。仕事のこともいつも気にかけてくれる温かい人でもあって、応援の気持ちに応えたいです!」
こちらが阿部さんの撮った写真。関ちゃんの人柄と力強さが伝わってくる。
もくもくと料理をする関さんと、それを撮り続ける阿部さん。言葉はなく、静かで不思議な時間だけど、何か特別な意思の疎通を感じました。
カメラマンとしてデビューしてから1年。仕事もどんどん増えて忙しい毎日だけど、これからも旅をしながら世界中の人と、その生活を撮り続けたいのだそう。今月には初めての展示も企画しているそうで、ますます活躍が楽しみだ!
今年の夏、今井浜海岸で撮りためた家族写真の展示「AT THE TAVES IN 」。場所は原宿『LYS GALLERY 』で12月22日〜12月29日までの開催!
(LYS GALLERY東京都渋谷区神宮前5-15-4 B1F)
阿部さんの写真はここから見られるよ。
http://www.yusukeabephoto.com/
instagram: @abe_yusuke