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第25回 POST 中島佑介さん | ブログ | マガジンワールド

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なかじま・ゆうすけ株式会社limArt代表取締役。2002年、早稲田の『ラ・ガルリ・デ・ナカムラ』内に古書&インテリアショップ『limArt』をオープン。2010年に代々木 VILLAGE内に『limArt』の姉妹店『POST』を開き、その後2013年に恵比寿に移転。東京都恵比寿南2-10-3 03•3717•8670 12:00〜20:00 月休

「本が読みたいなあ」って思うときほど、面白い本が見つからなかったりするから不思議だよね。
だったらいっそ街に出て、本選びのプロにおすすめを聞いてしまおう!
このブログでは、本が大好きな人たちのお店に行き、本を読むこと、探すこと(=Diggin’ Books)の魅力を教えてもらいます。
今月も張り切って行ってきます!

今回お邪魔したのは、恵比寿にあるアートとデザインを扱う書店『POST』。
ここは定期的に出版社ごとに特集を組み、ラインナップをがらりと変える珍しい店。
今回は代表をつとめる中島さんにお話を伺いました。
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白塗りの外観がギャラリーのよう。店に入るとポップなデザインの本が大きな棚に並びます。
今回は 「AMC」という出版社を特集。
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—出版社に注目した書店というのは珍しいですね。今回のラインナップについて具体的に教えてください!
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「7月2日から写真を収集する『ARCHIVE OF MODERN CONFLICT』、通称『AMC』というロンドンのフォトアーカイブ機関の出版物を取り扱っています。もともとは紛争写真の記録を目的として始まった団体なんです」

—紛争……すごくシリアスな内容を扱う団体からは想像できない、ポップな作品が多いですね。
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「写真は“常に現実を写すもの”と思われがちですが、単体としてアート作品として楽しめるものもあります。ここの出版物には報道写真という共通点がありますが、最近では編集の仕方が多様になって写真ひとつとっても色んな解釈が楽しめるようになりました」

—なるほど、本1冊だけを見るとおしゃれなアート写真集に見えてしまうけど、出版社全体の本を並べてみるとそういう共通点があるんですね。
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「見せ方にも工夫があるんです。例えば中国で捨てられていたフィルムからプリントした写真を、テーマごとにまとめた作品はポラロイドを貼付けた家族のアルバムのようになっていたり、外国の出版社は作品によってどんな印刷の仕方、デザインがいいのかをしっかり考えてつくっているところが多いです。単純に情報として写真を見せるなら電子書籍やウェブでも十分ですが、最近では本という三次元のものをどう生かすかが深く考えられています。紙媒体がピンチと言われている時代だからこそ、今まで以上に工夫が生まれて、面白い本が増えてきました」

—そもそも、中島さんが一つの出版社を取り上げるようになったきっかけはなんでしょうか?
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「僕はもともと洋服が好きだったんです。興味を持ち始めた1990年代に注目されたマルジェラのようなブランドは文化的な要素にも重きを置いていて、僕自身も音楽やアートのことも知ろうと思って本を頼りにしていました。知っているアーティストの本を見て、それに関連する本を辿っていくうちに、出版社ごとの特色のようなものに気付いたんです。その経験もあって、本を選ぶ軸を出版社にするという選択肢もあるんだと思いました。実際、出版社に注目すると自分の好みに合いながらも、知らない作品に出会うことができたんです」

—出版社ごとの特色、あまり考えたことがありませんでした。例えば、お店に常設されている出版社「シュタイデル」にはどんな特徴があるんでしょうか?
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「『シュタイデル』は2013年に映画『世界一美しい本を作る男』の主題にもなったゲルハルト・シュタイデルが作ったドイツの出版社です。シャネルのルックブックや世界的な写真家のロバート・フランクの写真集など、ビジュアルブックに関して多くの人から信頼されています。彼は会社内に印刷所を設けて編集から印刷すべてを手がけているんです。アーティストとの打ち合わせを何度も繰り返して、紙からインクの種類まですべてを1人で把握して、作者の意図を細かいところまで反映させているところがすごいですね」

—たしかに紙やインクは、本だからこそこだわりの出る部分ですよね。
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「いくらいい紙で手触りはよくても、内容としっくりこないなあというものもあるんです。シュタイデルがその道のパイオニアですが、ヨーロッパの出版社は内容と紙、ブックデザインの関係をより大切に考えているところが多いですね。変わってこちらは、店内の小さな現代美術本コーナーにあるフランスの出版社『Editions Xavier Barral』のアネット・メサジェというアーティストの作品集。彼女は色んな布で作品を作る人で、本文には布を彷彿とさせるしなやかな紙が使われています」

—アートの知識がなくても、感覚的に分かりやすいですね。
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「そうですね。そもそもアートブックや写真集は知識がなくても大丈夫です!(笑) よくアートに関して『50%はアーティストの意図で、50%は見る人が感じるもの』と言われることがあります。本を見てきれいだなあとかなんとなく好きだなあと思った時点で、きちんと本を楽しめている証拠です。気に入ったものがあったらその出版社から出ている本を調べてみて、どんどんアートやデザインの本に触れてみてください!」

それでは今月もディグって行きます。
今回は今月の出版社「AMC」をはじめ、常設のデザイン本コーナーからも発見。
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1st DIG『Holy Bible / Adam Broomberg& Oliver Chanarin』
「『AMC』の中でベストセラーとなった1冊です。聖書に書かれた一節とそれに関連した社会的出来事の記録写真が載っています。皮のカバーと金に塗られた淵のデザイン、そして紙質も聖書に多く使われる辞書のような薄くぺらぺらとしたもの。写真はかなり皮肉なものばかりで見た目にもかっこいい作品です」

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2nd DIG『The Architecture oh the book/ Irma Boom』
「ブックデザイナーIrma Boomの作品集です。この本の一番のこだわりは小さく作ること。手のひらサイズで、文字も人が読めるぎりぎりの小ささなんです。これは2013年に出された第二編。編を重ねるごとに、新作が収録されていき、作品数と比例して本のサイズも少しずつ大きくなっていきます。この作品は続編も予定していて、この外箱と同じ大きさになったらこのプロジェクトは完結するそうです」
ちなみに26㎝×47㎝のXXLサイズも出版されているそうで、値段はなんと31万円! 文字の大きさもそのまま拡大されているそうです。

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3rd DIG『hotel nacional rio/Olaf Nicolai』
「リオデジャネイロにある廃墟となったホテルをアーティストのオラフ・ニコライが記録したもの。この本は新聞紙と同じ素材で出来ているんです。ロール状に巻かれた紙に印刷する新聞紙は、日本では大量出版のためのもの。発行数の少ない写真集で新聞紙を使うというのは珍しいです」
昔はきらびやかな装飾でたくさんの人が訪れたホテルの今を表現した、ある意味“報道的”な内容にすごくマッチ。

アーティストの作品が本になるには出版社の編集が必要。
黒子的役割だけど、実はその編集が内容の表現方法を決める重要なポイント。
出版社を軸に本を探せば、自分の好きなテイストで知らない作品に出会える可能性も広がりそうだ。

POSTのHPでは、AMCやそれぞれの本の解説、次回の出版社のこともチェックできるよ!
http://www.post-books.jp/

写真/文 飯野僚子

http://blog.magazineworld.jp/popeyeblog/28314/


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