夢中なことがあったり、叶えたい目標があったり、誰にも真似できない自分だけの“何か”を持ってる人ってかっこいい。シティボーイってどんな人のことを言うの!? という問いの正解は決して一つではないけど、彼らが共通して持っているのは、そういう自分の興味に対する強いこだわりなのではないでしょうか。
今月のシティボーイは、大学4年生の溝口周太さん。彼は大学進学を機に大阪から上京し、慶應義塾大学体育会ボクシング部に所属するスポーツマン。今回は引退前最後のリーグ戦出場に向けて練習する彼に密着取材。部室のある、日吉キャンパスにお邪魔してきました!
『リーグ戦真っ只中!』
慶應義塾大学体育会ボクシング部はもともと大正14年に「慶應義塾拳闘倶楽部」として発足した、歴史のある部活。名前からして強そう。
練習は火曜日から日曜日までの週6日! まずは部室にお邪魔して、朝練習後の自主トレーニングを見学させていただきました。
ボクシング部の部室があるのは生い茂った木に囲まれた、学生の集うキャンパスの中心から離れた場所。ボクシングのストイックなイメージにぴったりです。
入ってまずびっくりしたのが、部室に流れる大音量のエレクトロやパンク。自主トレだから自室気分? と思いきや、全体練習のときも流れているのだとか。
「音楽を聴きながら動くことで、リズムがとりやすくなってフットワークもよくなります。なかには練習用にMIXを自作する部員もいるんです」
お気に入りの曲をかけたら闘志も燃え上がりそうだよね。
この日のメニューは基礎練習。
まずはシャドー。試合のイメージをしながら、フォームの癖を鏡でチェック。
「体が浮いてしまうのと、肩の入りが甘いのが課題です」
さっきまで笑顔だった溝口さんも練習に入ると真剣そのもの。
次はサンドバッグとミット打ち。「シュッシュッ」と言いながらひたすらパンチ。この音はなんでしょう?
「シュッシュと意識して息を吐き続けることで、パンチを出す瞬間に、無駄な力が抜けて強い一発が打てるようになるんですよ」
なるほど! 長年の疑問がついに解決。
『練習グッズ』
練習に欠かせないグッズも見せて頂きました!
試合用のヘッドギアとグローブ。
「かなり年期が入ってるので、汗臭いと思います。あまり近づかない方が……」
というわけでズームして撮影。
オーダーメイドの<アシックス>のボクシングシューズが彼のお気に入り。カラーは大学のチームカラーで、名前の刺繍入り。持つと驚くほど軽い!
「動きやすくするために、ソールが薄いのが特徴です。これもすぐ臭くなるので、こまめに洗って大事に使っています」
テーピングもボクシングに欠かせません。
「1年生の頃は難しくて、何度も巻き直していたけど、今では5分くらいで巻けるようになりました」
2、3メートルものテープをぐるぐる。練習前の準備も大変そう。
リングから出ても、絵になります。「立て、立つんだジョー!」と言いたくなるのは私だけ?
最後は筋肉の付き方を見ながら筋トレで終了。
「今は関東の大学で競うリーグ戦の真っ只中。出場出来るのは、部員35人中7人。僕の階級の枠は2人で、他にもたくさんライバルがいるんです。引退前最後のリーグ戦なので、なんとしてでも最後の試合に出たいです!」
溝口さんがボクシングを始めたのは大学から。ほぼ毎日の練習に減量。厳しい生活に飛び込んだわけとは……?
「大学入学当時は部活も入らずにフラフラしていたんです。でも、これじゃだめだと思って一念発起、半年遅れて入部しました。ボクシングをしている人ってシンプルに“強い”から、僕もそうなりたいと思ったんです! 今考えると理由が単純すぎますよね……(笑) ボクシングは、強い・弱いが試合ではっきりわかるので、勝てたときは本当に嬉しいです。試合が一番楽しいですね」
『減量!』
練習を終えて腹ぺこの溝口さん。今は体重キープの時期で、食事制限はなし。彼が住んでいる新丸子に場所を移して、通い続けているという行きつけの『萬幅飯店』へ。
彼がいつも頼むのは「四川風麻婆豆腐定食」。甘いのにピリッと辛くて後を引く味。通い続けて、これしか食べたことがないらしい。
「ここは練習後にいつも来る中華料理屋さんです。お母さんがちゃきちゃきしていて、来る度に元気をくれるんです。減量中はサラダだけの生活なので、今のうちに好きな物を食べておきます!(笑)」
減量中の楽しみは、試合後に食べたいものを考えること。いつもまっさきに食べるのは『Eggs'n Things』のパンケーキだそうです。意外すぎる。
『今井湯』
最後は行きつけのサウナがある銭湯『今井湯』へ。もともとは減量期間中にサウナに入るために通っていたけど、最近はすっかりハマって、減量に関係なく銭湯通いの日々。
「『今井湯』は家から近いということもあって、ずっと通っています。仲良しのおばちゃんがいて、彼女が番頭をしているときは料金をすこしおまけしてくれるんです(笑) でも最近はお店に行ってもいないことが多くて……」
と話していたらなんと後ろからご本人が! 「相変わらずガリガリねえ」と体を気遣われる溝口さん。部活のこと、進路のことなど近況報告。
銭湯の見学だけで失礼するつもりが、なんと“おばちゃん”のご好意でご自宅にもお邪魔しました。ここは以前食堂としてお店を開いていた場所で、かつては近くの大学に通う学生で賑わっていた、その名も『おばちゃん』。……そのままだ!
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特に運動部の男子御用達で、壁には学生時代常連だったプロ野球選手のサインがずらり。中には総合格闘家 所英男さんのサインも。思わず溝口さんからも「おばちゃん、めっちゃすごいやん」と本場大阪仕込みのツッコミ。
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「当時ここに来ていた選手達は私にとって息子のようなもの。溝口くんはその下の世代で、孫みたいな存在ね。ここに来る人はみんな活躍してるんだから、あんたもがんばりなさいよ!」とおばちゃんから激励の言葉が。“痩せすぎ”とのことでお菓子のお土産もいただきました。減量、大丈夫!?
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厳しい練習の毎日でも、めげずにボクシングに取り組む溝口さん。“強くなりたい”っていうドストレートな気持ちが彼を支えてるのかもしれないね。7月の試合まであと少し。試合出場なるか? 頑張ってください!
取材/写真/文 飯野僚子