profile:すずきめぐみ。食を中心とした雑誌の編集者を経て、『COOK COOP BOOK』にブックディレクターとして転職。選書や店内併設のキッチンスタジオでのイベント企画などを手がける。◯東京都千代田区紀尾井町4-5 G-TERRACE紀尾井町1F ☎03-3264-3230 12:00〜20:00(※営業時間と休業日は教室やイベントにより異なる)
「本が読みたいなあ」って思うときほど、面白い本が見つからなかったりするから不思議だよね。だったらいっそ街に出て、本選びのプロにおすすめを聞いてしまおう!
このブログでは、本が大好きな人たちのお店に行き、本を読むこと、探すこと(=Diggin’ Books)の魅力を教えてもらいます。今月も張り切って行ってきます!
今回お邪魔したのは紀尾井町にある『COOK COOP BOOK』。ここは料理を中心として、食に関する本に特化した書店で、レシピ集をはじめ、エッセイや雑誌も揃います。本の内容とリンクした、キッチンツールの販売もしていて、料理へのモチベーションが上がる!
買った本をゆっくり読みながら、レシピを考えるのもいいかも。
以前は渋谷にあり、2013年に紀尾井町に移転。リニューアルに際してキッチンスタジオもでき、今は料理研究家やシェフによるワークショップやイベントを盛んに開催。今回は本のセレクトや、イベント企画を担当する鈴木さんにお話を聞きました。
—鈴木さんがここで働きはじめたきっかけはなんですか?
「もともとは編集者をしていて、取材の帰りにふと立ち寄ったのが当時渋谷にあった『COOK COOP BOOK』でした。本を読むのが好きで、もちろん食べることも大好き。編集者としても食に関する記事を扱うことが多かったので、客として通うようになり、料理の本の魅力にどんどんハマって行きました。そこで思い切って、転職をしたんです」
食の本を作る立場だった方によるセレクトは、信頼がおけますね。
—レシピ本ってたくさんの種類があるから選ぶのに迷ってしまうけど、ここは並べ方も見やすく選びやすいと感じました。何か工夫されていることはありますか?
「移転をして店が広くなった今も、必要以上に本を置きすぎないというのはかなり意識しています。レシピ本、エッセイ集、雑誌などそれぞれのジャンルごとに3〜5タイトルくらいは定番として、どれもおすすめのできる本を置いています。それ以外は、季節やそのときどきの流行をみて、今推したいものだけを厳選しています。料理は生活と密接することなので、足しげく通ってくださる方も多いですが、そんな方にも“いつ来ても違う”と感じてもらえるように心がけています」
—たしかに、食べ物の流行って、移り変わりが激しいですよね。今、具体的に食のトレンドというのはどうなっているんでしょうか?
「世の中の全体の流行といえばサラダでしょうか。NYスタイルのサラダ専門店なども出来たりしましたよね。実際に興味を持ってドレッシングを自分でつくる方も多い気がします。また、最近は“自家製”が人気です。例えば先日、自家製味噌作りのワークショップを開催した際には、キャンセル待ちの方が出るくらい好評をいただいたんです。予想以上の反響で、そういったお客さんの反応から、味噌に関する本を選んでみる、なんてこともあります。もちろん、本の売れ行きからワークショップを開催することもありますよ」
サラダの本の横に、オイルボトルが置いてあって、ついつい手に取りたくなってしまいます。
料理本に混じって、先月のPOPEYE『部屋と料理』も発見!
—レシピ集を買うことに慣れていない男性も多いと思うんですが、何か選び方のコツなどはありますか?
「欲張りすぎていろいろ載っている本を選ぶと、逆に何作ったらいいかがわからなくなってしまいますよね。もっと力を抜いて、一つの切り口に特化した本を選んでみると楽しいです」
「例えばこちらは、山戸ユカさんによるアウトドア用のレシピ集『1バーナークッキング』。アウトドアの設定ですが、1つのバーナーで作れる料理だけを集めているので、シンプルで入りやすいですよ」
一つ視点を設けるだけでいつもよりワクワクしてくるし、取っ付きやすくなるのは不思議。鈴木さんをはじめスタッフの方に相談したら、自分にぴったりな本を教えてくれる。
それでは今月も、ディグって行きましょう!
1st DIG『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』おおひなたごう
「目玉焼きには何をかける? とんかつのキャベツはいつ食べる? みかんの皮はどう剥く? など、些細なことだけど、人によってまったく答えが違う問題をコミカルに描いたマンガです」
食い物の恨みは恐ろしいと言うし、地雷を踏まないためにも読んでおこう。私は目玉焼きにソースをかける人が許せない!
2nd DIG『あしたのルウカレー』東京カリ〜番長
「カレー界では有名な東京カリ〜番長というユニットによるレシピ集です。こういうカレーなら、このメーカーのこのルウが合う、という切り口に始まり、食材別レシピまで、カレー漬けの一冊です」
カレールウってすごく研究されているから、入れるだけで十分美味しくできるけど、そこからさらにもう一歩先に踏み込んだカレー愛に拍手。
3rd DIG『ひとり料理 これだけあれば』木村緑
「タマネギ、キャベツ、大根、じゃがいも、にんじんに注目したレシピ集です。巻頭には料理に関する基本をマンガで説明してくれているので、とても読みやすいです」
何かと必要なわりに、野菜室に長らく鎮座しがちな常連たちに、救いの手を差し伸べる一冊は、古くなったときの対処まで教えてくれる親切なつくり。肉じゃがからスパニッシュオムレツまでカバーする手広さもいい。
先月号の『部屋と料理』でインタビューした、玉村豊男さんは「食生活はライフスタイルの表現だから、自分で料理せずに外食ばかりしているのは、人生を他人にゆだねることと同じだよ」と言っていた。それなら逆に、自分の料理とちゃんと向き合えば、人生が豊かになるとも言えるはず。『COOK COOP BOOK』なら、そのきっかけとなる一冊がきっと見つかる!