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第13回 東京くりから堂 土屋 貴司さん

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profile:つちや たかし。8月で4年目を迎える書店「くりから堂」にて店主を務める
◯東京都大田区山王2-37-2 ☎03-3776-8835 12:00-20:00 土日 12:00-21:00 不定休
 
 
「本屋さんって、意外と多い」。この取材を始めて気づかされました。
住んでいる街に入ったことのない本屋がありませんか?
まずは入ってみて、できたら本屋の店主に好きな本を聞いてみると、思いもよらないおもしろい話が聞けるんです。
そこには、本屋を始めるきっかけになった本、人生を変えた本など、その本屋さんにとって大事な本が必ず存在する。
当たり前かもしれないけど、“本屋の主人の本の話”はおもしろい。
このブログでは、そんな本フリークな人たちのお店に行き、本を読むこと、探すこと(=Diggin’ Books)の魅力を教えてもらいます。
 
 

一口に「本」と言っても、その種類は無限大。そんな中でも、誰しも自分のお気に入りや好みのジャンルが絶対にあるはず。
でも、思いがけず違う世界に触れることができるのが本屋のおもしろさ。そこから一気にハマってしまったり、大袈裟かもしれないけど、自分の人生を大きく変えてしまう可能性もある。
今回はそんな体験ができる本屋さん、「くりから堂」を取材。
 
 

JR大森駅から歩くこと10分、大田区山。この辺りは萩原朔太郎や三島由紀夫、川端康成などの作家が住んでいた「馬込文士村」と呼ばれる地域。そんな場所に「くりから堂」は位置しています。


いつ頃から本に興味を持ち始めたのですか?
「アパレル会社に務めながらバンドをやっていたのですが、学生の頃から自由が丘にある『東京書房』という本屋さんにほぼ毎日通っていたんです。その後、アパレルを辞めて、『東京書房』へ行った時に“仕事辞めちゃったんですよね”って言ったら“じゃあうちで働けば?”って声をかけてもらったんです」


では、『東京書房』に入ってから本格的に本の勉強を始めたのですね。
「そうですね。突然本屋の店員になったので戸惑ったこともたくさんありましたが、そのぶん、自分にしかできないこともできたのかなとも思います」

自分にしかできないこととは?
「当時、雑誌は古本屋さんにあまり置いてなくて、販売期間の過ぎた雑誌は無料同然の値段で売られていたんです。プレミアや定価以上の値がつくなんてありえなかったんですよ。でも僕は“この特集は手元に置いておきたい!お客さんに見て欲しい!”と思うものがすごく多くて。それで、新しく古雑誌専門のコーナーを設けたんです。今思うと、素人だからこそできたのかなと思いますね」


今もバンドをやっているんですよね?バンドマンと本屋さんってなんだか対極のイメージですね。
「そうかもしれませんね。でも、音楽をやっているからこそ入ってくる情報や普通の本屋さんのアンテナにはひっかからない物に気づけると思うんです。違う世界も知っているからこそ専門店とは違う本屋の楽しみがあると思いますね」


くりから堂を始めようと思ったきっかけはなんですか。
「自分がすごく多趣味なので、ジャンルや“本屋”という固定観念にとらわれないお店をやりたいと思っていたんです。普通の人だと捨てちゃうけど、好きな人にとっては宝物だったりするじゃないですか。ボロボロで値段が安くても、面白い本はたくさんありますからね。そういう物を集めて自分の趣味を全て詰め込めこんでいたら結果的に本屋になったという感じですね」


そういうスタンスの本屋さんは珍しいですよね。
「そうですね。自分が本屋に入りたての頃の視点はすごく大切にしています。“素人目線”言うと少し言い方が悪いかもしれませんが、本に対しては色眼鏡をかけずに見るようにしています。“あの本はサブカルチャーの本だよ”と一般的に言われているものも、実は民俗学や歴史の要素が多分に盛り込まれていることなんかもありますしね。例えば、いとうせいこうさんとみうらじゅんさんの本『見仏記』も普通の本屋さんだったらカルチャーの棚にありますけど、うちの場合は民俗学の棚にありますから(笑)。棚を見ながらそういう発見をしてもらえると嬉しいです」

くりから堂独特の本への考え方が伝わってきたところで、オススメの3冊を紹介してもらいましょう!


1st Dig DRAGON ISLAND
「これは『ロカビリータイムズ』という雑誌の増刊号なんです。当時、ライブハウスを中心に販売されていたものです。ロカビリーの全盛期を感じる本で、90年代がすごく特別な時代だったというのを感じますね。普通の本屋さんには、まずないと思います(笑)。ちなみに、くりから堂が始まった時からお店にある本です(笑)全国のビリーさん達、是非!!」


2nd Dig CULT ROCK POSTERS / Aurum Press Ltd
「これはロックアーティストのポスター集です。ジョニーサンダースやイギー・ポップ、デヴィッド・ボウイのポスターがキャプション付きで載っていて、ロック好きな人は間違いなく唸る一冊だと思います。僕のお気に入りの一冊なので、音楽の趣味が合う方に是非買って頂きたいです」


3rd Dig VAN グラフィティ / 立風書房
これはVANの洋服や広告などの、VANに関するものについて書かれた本です。最近アイビー関係の本はとても人気があります。この本では、アイビーに関して様々な人がコメントをしているんです。ここまでアイビーのグラフィティに焦点を当てて書いてる本はありそうでないんですよね。ファッションの勉強をしている方には是非読んで欲しいです」


番外編 POPEYE No.1〜No.3 / マガジンハウス
「これは説明不要ですね(笑)。POPEYEの創刊号からNo.3までです。他にもPOPEYEのバックナンバーは数多く取り扱っていますが、やはりこの3冊は別格です。全国のシティボーイ達、いかがですか?」
 
 
 
 
 

音楽、ファッション、サブカルチャー、純文学。自分の大好きなものや影響を受けたものがぎゅっと一カ所に詰め込まれた場所。
 
 
「くりから堂」ほど、店主の生き様やこだわりを感じる本屋はあまりない。
なんでもある大型書店へ行くのも良いけど、そこにしかないスタイルを持つ本屋へふらっと行って、自分の知らない世界の話をじっくり聞くのも新しい本屋の楽しみ方かもね。
 
 
 
 
取材/文/写真 廣瀬大士 写真/宮本賢


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