◯東京都港区高輪3-13-65 味の素グループ高輪研修センター内 ☎03-5488-7319 開館時間10:00~17:00 日祝年末年始、その他休 都営浅草線高輪台駅から徒歩3分
近頃、東京では代官山の蔦屋書店のように、トークショーやカフェサービスなども楽しめる本屋さんや、ZINEだけを取り扱ってる本屋さんなど、それぞれテーマを持ち、新しい本の楽しみ方を提案する本屋さんができています。このブログでは、かけだしライターの私、宮本 賢がそんな本屋さん訪れて取材。本を読むこと、探すこと(=Diggin’ Books)のおもしろさを教えてもらおうという企画です。インディペンデントでかっこいい本屋さんにいる「本のスペシャリスト」に会いに行ってきます。「Diggin’ Books」毎月更新!
日本人なら知らない人はいない調味料「味の素」。その味の素の財団、「食の文化センター」が運営している「食」専門の図書館があるのを知っていますか?今回は、本屋さんではなく「図書館」で本を掘っていきます!職員の方に話を伺いながらおもしろい本を探します。
噂には聞いていたんですが、すごい量ですね。全部で何冊くらいあるんですか?
「食に関わる本を全部で4万冊くらい所蔵しています。本以外にもDVDなども置いてありますよ」
どのような経緯でこの図書館は設立されたのですか?
「この財団は、食文化の普及のために1989年設立されたんですが、事業の大きな柱の1つが図書館なんです。最初は味の素の社員が持っていた本が中心で、6000冊くらいだったそうです」
江戸時代、明治時代の古い食の本から、新しい海外の本までなんでも揃っていますね。すごく貴重そうなんですけど全部閲覧できるんですか?
「ほとんどの物ができますよ。中には貸し出しできないものもありますが、独自の分類で、気軽に手に取れるように配架しているのがこの図書館の特徴です。戦後すぐの料理の教本や食関連企業の社史などもありますよ」
独自の分類とは?
「普通の図書館は頭文字のアルファベット順で並べたりするんですけど、ここでは内容のジャンル別で配架しているんです」
例えばどんな棚がありますか?
「おもしろいモノだと、映画などに出てくる料理を再現したり解説したりしている棚や、食のエッセイだけを集めた棚などがあります。あとは、豆腐や香辛料など食材別で棚もありますよ」
他にも普通の図書館と違った点はありますか?
「この図書館は、江戸時代の錦絵も収集しているんです。一部ですがレプリカを2階に展示しているので、いくつかご覧になれます」
この絵はなんでしょうか?
「この絵は歌舞伎を見ているお客さんの絵です。よく見るとわかるんですけど、結構飲み食いしているんです。西洋の演劇のスタイルが入ってくるまで日本人はご飯やお酒を嗜みながら観劇していたんです。今では、相撲だけ唯一このスタイルが残っていますよね。錦絵を見るとその当時の食の文化がわかるのでおもしろいですよ」
それでは、図書館の中から古いモノを中心に3冊選んでいきます!
1st DIG 料理の友/大日本料理研究会
表紙の雰囲気がいいですね。いつの雑誌ですか?
「大正時代に発行された、日本で初めての主婦向け料理のノウハウが書かれて雑誌です。大正から昭和にかけて発行されていたので時代の変化がわかるのがおもしろいですね。戦時中になると紙の質が悪くなったり、節米料理の作りかたをレクチャーしたりと内容が変わるんです」
当時は写真を使っていなかったので、すべてイラスト。
2nd DIG 大東京うまいもの食べある記/安井 笛二
このイラストは最初から書いてあったんですか?(笑)
「そうなんですよ。スタッフの落書きと間違えられます(笑)、ここには昭和8年度版と10年度版がありますが、東京の飲食店情報の本としてはかなり初期のものですね。著者の安井さんのコメントを参考にお店に行っていた人も多いと思います。丸の内、新宿とかエリア別になっていて当時の東京のレストラン事情がわかるので勉強にもなりますね」
3rd DIG 食道楽/村井弦斎
「明治時代に発行された小説で、和洋中のハイカラな料理の作り方がたくさん登場するのですが食だけでなく恋愛話とかも絡んでいるんですよ。カラーの口絵も綺麗なんです。この本は復刻されていて、今でも人気があるのが凄いですよね」
この図書館に行かれる際にはひとつ注意事項がある。
それは決して空腹状態で行ってはいけないこと。
「カワハギの肝」なんてエッセイを読んでしまった日には、出たあとにどこに飲みに行こうかなんてことばかり考えてしまうからだ。
行く前には、必ずどこかで腹を満たしてからにしよう。
(できれば味の素製品を食べてから、ね!)
取材/文/写真/宮本 賢