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第14回 タコシェ 中山亜弓さん

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profile:なかやま あゆみ。今年で20年目を迎える書店「タコシェ」にてスタッフを務める
◯東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ3F
 ☎03-5343-3010 12:00-20:00 年中無休

「本屋さんって、意外と多い」。この取材を始めて気づかされました。
住んでいる街に入ったことのない本屋がありませんか?
まずは入ってみて、できたら本屋の店主に好きな本を聞いてみると、思いもよらないおもしろい話が聞けるんです。
そこには、本屋を始めるきっかけになった本、人生を変えた本など、その本屋さんにとって大事な本が必ず存在する。
当たり前かもしれないけど、“本屋の主人の本の話”はおもしろい。
このブログでは、そんな本フリークな人たちのお店に行き、本を読むこと、探すこと(=Diggin’ Books)の魅力を教えてもらいます。

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サブカルチャーのメッカ、中野ブロードウェイ。漫画やフュギア、コスプレなどの専門店がひしめき合うブロードウェイの中でも、ひときわ目を引く本屋さん『タコシェ』。入り口に立てかけられた看板から、お店の“普通ではない感”が伝わってきます。この独特な雰囲気を醸し出している看板は漫画家、友沢ミミヨさんに描いてもらったもの。

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映画の予告編のみを集めたDVD、昭和のプロレスマガジン、漫画家のキャラクターのバッヂや自主制作のCDなど、店内を見渡すと、大型書店では見る事のないものがズラリ。中でも一番気になったのは『Uターン』という小さいブーメラン型のおもちゃ。値段は300円。ブーメランがどんな動きをするのかは実際に買って試して欲しい。

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入った瞬間、普通の本屋さんとは違った雰囲気を感じましたが、なぜこのようなお店を始めたのですか?
「最初は漫画雑誌の『ガロ』からアンテナショップを出したいという呼びかけによって始まりました。半年間早稲田でやった後、高円寺へ移転、その後1995年にブロードウェイへと移りました」
 
 

「ガロ」とは青林堂が1964年から2002年頃まで刊行していた漫画雑誌。サブカルチャーの総本山的な漫画雑誌で、みうらじゅんや糸井重里などの個性派作家たちが執筆していたことでも有名。アンダーグラウンドで個性派の作家が多いので、漫画好きは一度読んでみたら間違いなく病みつきになるはず。
 
 
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廃墟に特化した本や、ラーメンの背油特集のZINE、面白くないマンガ特集のZINEなど、珍しい品揃えであることは一歩店内に入るだけですぐに分かります。そんな幅の広いセレクトを創業以来続けていくのは簡単ではないはず。なぜこのようなセレクトをしているんですか?
「お店を始めてみたら、漫画や雑誌だけでは『ガロ』のアンテナショップとして物足りないと感じました。漫画が好きな人の中には、そのアーティストの原画や下書きが欲しい人もいるのでは?と思い、漫画以外のものも置くようになったんです。最初は『ガロ』にゆかりのある作家さんのものを中心に置いていましたが、その周辺のカルチャーに派生していくうちに、今のようなお店になりましたね」

 
 
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どのようなお客さんが来るんですか?
「自主制作や世の中の既成概念からはみでた内容の本などがあるので、他では買うことのできない珍しいものを求めてくる人が多いですね。あとは、制作をしているアーティストさんもたくさん来てくれます」
 
 
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「おたくと田中角栄」や「消されたマンガ」など過激なタイトルのものから、学生が制作したZINEまで幅広いジャンルのものが置いてありますが、どういう基準で選んでいるのですか?
「基本的には新刊ですが、時期的に新しいだけでなく、昔発売されたものでも面白いと思ったものはあえて長く置いたりもしています。あとは、個性的な作家さんの物で、他の書店ではひっそりと本棚にあるものでも、うちでは主役の位置にいますね(笑)」

 
 
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ぼくの友達が作っているZINEが置いてあって驚いたのですが、どうすれば置いてもらえるんですか?
「持ち込みに関しては基本的に何でも置きます。お断りすることも稀ですがあります。ただ、小規模であまり出回らずに終わってしまうものや、話題作の影でうもれてしまうものなどを少しでも発掘したいという気持ちは常に持っています。なので、まずは作ったものをお店に見せにも来て欲しいですね」
 
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これだけの本があると、DIGにもかなりの時間がかかります。ユニークな本やZINEが気軽に買える値段で置いてあるので、レコードやCDのようにジャケ買いしてみるのもアリかも。
 
というわけで、今月もDIGっていきましょう!!
 
 
1st DIG 臍の緒街道/逆柱いみり
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これはタコシェが出版している本です。過去に6回、タコシェがアーティストとコラボレーションして本をつくっています。この最新版は、逆柱いみりさんという「ガロ」出身の漫画家さんのもので、逆柱さんが一貫して描いている「街」や「車」、「不思議な生き物」などを中心に描いたイラスト集です。「タコシェ」は他には林月光さんなど多くの作家さんとコラボレーションしています。林月光さんは、石原豪人さんという作家さんの別名義で、エロティックに特化した作品の時の別名なんです。
 
 
2nd DIG  š!/David
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これはラトビアの漫画です。Davidというスイス人編集者が作っているものなんです。ラトビアでは「漫画は子どもが読むもので大人が読むものではない」という考え方が常識で、青年用の漫画はなかったんです。その常識に驚いたDavidが、ラトビアに青年漫画の文化を根付かせるために作ったものです。日本も含めた世界中の作家が寄稿しています。
 
 
 
3rd DIG PANOS/LE DERNIER CRI
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これはフランスのマルセイユを中心に活動しているアーティスト集団、『LE DENIER CRI』によってまとめられたものです。チカーノの囚人が監獄でハンカチにコーヒーやらペンで暗号的なイコンを書いたものを集めた作品集なのですが、ワイルドでインパクトのあるものばかりです。フランスのアートと言うと少し高尚なイメージがありますが、『Le Dernier Cri』の出版物ではお洒落じゃないフランスのアートを感じることができてとても面白いです。
 
 
番外編 グラインドハウス予告編
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「タコシェ」の店長、伊東美和さんは大のゾンビ映画フリークとして有名。店内にもホラー映画のDVDが多く販売されています。最近のオススメは『グラインドハウス予告編』。グラインドハウスとは、B級映画を2本立てや3本立てで上映する映画館の総称のこと。パッケージからメニュー画面まで忠実につくりこまれていて、日本で未公開のホラー作品をはじめ、様々なジャンルのB級作品の予告編が詰め込まれています。ちなみに、このDVDとタランティーノの「グラインドハウス」とはまったく関係はないが、タランティーノは小さい頃からグラインドハウスによく通っていたらしい。
 
 
 
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「タコシェ」はお客さんにとってももちろん大切な場所ではあるけど、それ以上にアーティストにとって大切な場所なのかもしれない。
独特な個性が詰まった作品でも、「タコシェ」の店内に置けばむしろ自然。ということは、ここで目立てれば本当の個性の持ち主。
DIY精神を持ったシティボーイは自分で作ったZINEや写真集を持って行ってみるのもいいんじゃない?

取材/文/廣瀬大士 写真/宮本賢


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