「Magazine for City boys」をスローガンとしてリニューアルをしたPOPEYE。このブログでは、かけだしライターの私、宮本が街のリアルシティボーイを取材。彼らのホームタウンを巡りながら、シティボーイとは何かを考える企画です。「シティボーイを探せ!」毎月更新!
なぜホームタウンか?渋谷や六本木の最先端のスポットを知っているからってシティボーイとは呼べないと思うんです。自分の住んでいる街の素敵なところを見いだし、自分なりに消化している。そんな人こそ、シティボーイだと思いませんか?というわけで、今回は日本料理人を目指す竜大(たつひろ)さんのホームタウン上野毛を巡ります。
竜大さんのホームタウン「上野毛」
創業100年になる、御殿場の老舗日本料理屋に生まれた竜大さん。生まれたときから料理に囲まれて育ったというのだが、ポマードで髪をセットし、クラシックカーを乗り回すなど「日本料理」的雰囲気があまりない。そんなギャップのある竜大さんを追っていきます。
「上野毛で一人暮らし」
実家の日本料理屋を継ぐためには、経営の勉強も必要だと東京の大学に進学。
「高校を卒業したらすぐ料理の修業を始めようと思ったんですけど、親父が“まずはいろんな世界をみたほうが良い”と言ってくれたんです。それで、東京に来てとにかくバイトしてお金を貯めて自分の好きなモノを買ったり見たりすることにしました」
「デボネア」
1960代に三菱から発売された『走るシーラカンス』の異名を持つデボネア。
「毎日ほとんど寝ないでバイトして、18歳のときに買った旧車です。高速で70kmくらいしかでないので、毎回ビクビクしながら乗っているんですよ(笑)」
大学にも車で通っているという竜大さん。旧車通学はシティボーイの憧れです。
しかし、近日料理の勉強資金を確保するため手放すことに。
「ポマードと革靴」
髪のセットはポマードと櫛。靴はブーツを履く。
自分のスタンダードを持っていると余計なことを考えないですむとポパイ「スタンダード特集」でスタイリストの山本康一郎さんも言っている。
「ホームタウン、行きつけ4軒」
料理を勉強しているだけあって、ホームタウンのお店事情に詳しい。そば屋、ハンバーグ屋、焼き肉屋ときて最後はラーメン二郎です。
「更科はそばもおいしいですけど、使っている鶏肉がすごく良いので焼き鳥丼を食べています。ハンバーグ屋さんはソースが気に入っていますね。焼き肉屋の上野手はネーミングとランチの安さが良い所です。ラーメン二郎は、グルタミン酸系の化学調味料がポイントだと予想しています(笑)。最近は舌を敏感にするために食べないようにしているんですけど、たまに我慢できなくなりますね」
「勉強用の本」
コツコツと集めている料理の本の一部。これらの本やテレビで情報を集めて、行きたいお店を見つけ、お金が貯まると一人で食べに行く竜大さん。一流の日本料理屋で一通り食べると安くても3万円は超えてしまうという。
「お金を作るために泣く泣く車を売ることにしました。季節によって使う食材が違うので、同じ時期に最低でも2軒は良いお店に行くようにしています。同じ食材でも、店によって調理の仕方が全然違うので」
京都まで、日帰りで目当ての日本料理屋さんに行くこともあるという。
「寿司勉強中」
現在、寿司の勉強中。1日に60人前握ることもあるとか。YouTubeを駆使して研究することもある。
「数寄屋橋の次郎という伝説の寿司職人の動画なんですけど、断面の米のバランスが神業なんですよ!上3段だけ固めているんです、わかります?」
興奮気味で語ってくれた竜大さんだが、レベルが高すぎてまったく反応できませんでした。寿司の動画がiPadに入っているのはシティボーイ?
他にも、合鴨のさばき方やたけのこのえぐみの取り方などのマニアックな動画がたくさん。
「代官山蔦屋書店」
料理の本を買いに行くときは代官山の『蔦屋書店』。本日もお目当ての本を捜索中。
「品揃えがいいので、毎週のように来ています。眺めているだけで楽しすぎるのでなかなか帰れないんですよね」
「憧れのお店」
お目当ての本をゲットして満面の笑み。今回手に入れたのは、昔から憧れているお店『祇園 佐々木』の本。
「大学を卒業したらここで修業したいと思っているんです。このお店は、経営も料理も極めていて、僕にとっては理想のお店なんです」
日本料理に対しては特別な想いがある竜大さん。
「日本人ってあんまり日本料理を食べに行かないじゃないですか。素材を活かす料理なので値段は高くなってしまうんですけど、ここまで季節とか文化を感じられる料理って他の国にはないと思うんです。」
竜大さんは特に若い人に日本食の良さを伝えたいという。
「若いときってお金を貯めて高い服を買いますよね。そういう感じで、良い食材を食べに行くっていうカルチャーができればいいなと思っているんです。舌の感覚は若ければ若いほど敏感なので、その時期に良いものを食べたほうがいいと思うんです。その為に、日本料理が楽しいものだっていうのが伝えられる能力をつけたいですね。」
「日本料理談義」
初めて会った人は、日本料理とかけ離れた彼の見た目や趣味に戸惑うかもしれない。
しかし、彼が料理以外のことにハマるのも若者にとって入りづらい“日本料理”という世界を知ってもらうため、自分がまず外の世界と繋がっているのかもしれない。フシギと竜大さんに会ったあと、今迄興味のなかった日本料理屋に一人で行ってみたくなる。
いつの日か「今月のあの店の新作料理ヤバいらしいよ」っていう会話が日本に若者のスタンダードになったらおもしろくない?
取材/文/写真/宮本 賢