profile: ふると・がく|車の販売員、書店員を経て2006年に『ロンバルディ』をオープン。東京都港区南青山3-15−2マンション南青山101 03•5785•3371 14:00〜20:00 不定休
「本が読みたいなあ」って思うときほど、面白い本が見つからなかったりするから不思議だよね。だったらいっそ街に出て、本選びのプロにおすすめを聞いてしまおう!
このブログでは、本が大好きな人たちのお店に行き、本を読むこと、探すこと(Diggin’ Books)の魅力を教えてもらいます。今月も張り切って行ってきます!
本誌の特集『車が欲しい!』ですっかり車に乗りたい欲が湧いてきて、本屋さんでも車の本が目につくようになった。そんなところ見つけたのが表参道にある『自動車趣味の店 ロンバルディ』。ここはその名の通り車に関する本を扱う古書店。店主の古戸学さんに話を聞いてきました。
青山通り沿い、清水湯がある路地をまっすぐ進んだところにあるのがこの『ロンバルディ』。青いタイルのビルが目印。
小さな店内には60〜70年代に作られた外国の車を中心としたテーマの本が約1万冊もラインナップ! 他にもアンティークのミニカーや、実際に車の部品として使われていたエンブレムなどを買うこともできる。
どんなお店かを知るべく、まずは古戸さんがどんな車に乗っているかを尋ねると、ご自身のカスタムとまったく同じものというミニカーを見せてくれた。こちらはロンバルディ仕様のフィアット500。
お店の名前でもある『ロンバルディ』は、今はなきイタリアのカロッツェリア『フランシス・ロンバルディ』のこと。昔の車は、メーカーが車体を作ったあとにカロッツェリアと呼ばれる工房で外装などをカスタムしていたそうで、このフィアットもそのロンバルディによるもの。フロントのグリルがお気に入りポイントだとか。
では肝心の本のセレクトはというと、60〜70年代のものが多い。車は今もどんどん新しいものが出てきて常に進化してるけど、なんでこの年代のものが多いんだろう。
「60年代は戦後から少し時間が経って、車の技術が大きく進化し始めた年なんです。その後70年〜80年代にかけてさらにドーンと技術が活用されて、スーパーカーブームというものが始まりました。そういった車を題材にしたアニメやおもちゃなども多くつくられて子供たちの間でも人気になったんです。その子供達が大人になった90年代もスーパーカーブームは続き、本が多く出版されたという経緯があります」
スーパーカーブームが去った今でも、やっぱり男たるもの“速い車”にはロマンを感じてしまう! 実際、現在もフェラーリやポルシェに関する本の出版の数は他に比べて圧倒的に多いそう。
「旧モデルから最新モデルまで、時代を問わずフェラーリとポルシェの人気はすごいですからね。ただ、本の数は多いですがあまり買う人はいないんです(笑)。購入する人が多いのは、意外にもミニやロータスをテーマにした本。おそらく、これらの車は自分でもメンテナンスをできる気軽さがあるので、車を買った後に勉強をする人が多いんだと思います。たしかにフェラーリやポルシェは自分ではメンテナンスができないし、勉強せずとも乗って走るだけで十分な気がしますよね(笑)」
たしかに、フェラーリに乗ったら人生のゴール感がある……。ところで、やっぱり外国の車が気になっちゃうけど日本車に関する本はどれくらいあるんですか?「外国の車に比べるとやはり少ないですが、日本車でも世界で人気の車種はあって、マニア向けの面白い本もあるんですよ。これは日産が1957年から製造しているスカイラインの写真集です。出版は昭和52年で、それまでに発売されたラインしか掲載されていないですが、今も作られ続けている車です。表紙にもなっている『スカイラインGT-R』はレース用に作られたグレード。世界中にファンが多いんです。なんと付録にはレースのときのそのエンジン音が録音されたレコードが付いています!」
レコードのB面には、70年代のスカイラインのCMで流行した歌『愛のスカイライン』が。かなりマニア向けの1冊だけど、日本が世界に誇る車の魅力についても知っておきたい。
車の本において、カタログ以外のオフィシャルブックというのは、日本では珍しいらしい。そんな中、古戸さんがある1冊を見せてくれた。そう、僕たちが大好きなフォルクスワーゲン!
「これは当時フォルクスワーゲンの代理店をつとめていたヤナセがビートルの国内発売25周年を記念して作った雑誌です。創刊当時のポパイのような雰囲気で、ビートルに乗った有名人のインタビューやおすすめのドライブコースなど、本当に毎週発売されている雑誌のような読み応えで、どれだけこの車が愛されているかが伝わってきます」
車1台のために1冊できるなんて! ちなみに当時のおすすめのドライブコースは横浜。早朝の山下公園は人が少なくて気持ちがよかったんだって。40年ほど前の雑誌だけど当時のカスタムやワーゲンの楽しみ方は、今も参考になりそうだ。
というわけで今月もディグって行きます。
1st DIG『SCHLAFENDE SCHONHEITEN』「これはドイツで出版された本で、廃墟で見つかった名車を撮影した写真集です。題名は日本語で『眠れる森の美女』という意味。ここで見つかった車たちはすべてオークションに出され、大事に保管をしてくれるコレクターたちのもとに渡って今一度人々を楽しませています」
ときどき都内の住宅街でも、人気のない住宅にホコリを被ったクラシックカーが停まってることがあって、あれを見るとちょっとドキドキする。車一つとっても色んな楽しみ方があるけど、車にも化石発掘的なジャンルがあるとは思わなかった!
2nd DIG「これは1937〜65年にかけて作られたイタリアのスーパーカーの歴史について書かれた本です。当時は一つ一つが手作りで、形も丸みを帯びたものがほとんど。今は安全面から車の形にも規定が多く、どうしてもシルエットが似てしまうのですが、昔のスーパーカーはどれもが独特な形をしていました。『シェルビーコブラ』や『ミウラ』などファンの多い車のルーツにも見えるような車が多く乗っていて目に楽しい1冊です」
写真は70年以上も前に作られたスーパーカーだけど、逆に未来の車に見えるのは気のせい!?
3rd DIG 『ORIGINAL AC ACE & COBRA』
「僕も憧れのACコブラのビジュアルブックです。本物を買おうとすると1億円はくだらない幻の名車で、レプリカも多く作られています。ただ、そのレプリカもかなり高価なのでこういった本で楽しむのがおすすめかもしれません」
なかなか車を買えない人も、念願のマイカーを手に入れた人も、車に関する本を読んだらもっとこの世界にどっぷりハマるはず。意外に(?)堅苦しくないものが多いから、読まないのはもったいない!