「Magazine for City boys」をスローガンとしてリニューアルをしたPOPEYE。このブログでは、かけだしライターの私、宮本が街のリアルシティボーイを取材。彼らのホームタウンを巡りながら、シティボーイとは何かを考える企画です。「シティボーイを探せ!」毎月更新!
なぜホームタウンか?渋谷や六本木の最先端のスポットを知っているからってシティボーイとは呼べないと思うんです。自分の住んでいる街の素敵なところを見いだし、自分なりに消化している。そんな人こそ、シティボーイだと思いませんか?というわけで、今回はおじいさんの代から続くネクタイ工場を実家に持つ啓弥さんのホームタウン、十条に行ってきました。
高校生のころ、知り合いにファッションショーに連れていってもらい、モードファッションに夢中になり、卒業してからは野田秀樹の舞台に衝撃を受け、演劇鑑賞の日々を送っている慶応大学2年性の松井啓弥さん。
時代の流れに敏感な若者という側面もありつつ、下町情緒溢れる街も愛する啓弥さんと一緒にホームタウンを巡ります。
「ファッションが好き」
実家がネクタイ屋さんで、両親が服好きだったこともあり啓弥さんも自然とファッションに興味を持つように。
「真冬でも着られるステンカラーコートを探していたところ、『トム・ブラウン』のコートがセールで売っているのを発見して一生物にするつもりで買いました。ドキュメントバッグは実家の近くにある革屋さんで売られていたものですね。学校に行くときはだいたいこれを使っています。ファッション雑誌は高校生のころからコツコツ集めていて、最近ではポパイのイギリス特集がかなり好きでした」
そんなファッション好きな啓弥さんは、次号ポパイ、スナップ特集のどこかに登場するのでお楽しみに!
「まずは町の名物」
最初に連れてきてくれたのは、町の名物の『篠原演芸場』。
「ここで、早乙女太一的な人たちの大衆演劇が見られるんですよ。このジャンルが好きな人には有名な場所らしいんですけど、ぼくは昔から喫煙所として使わせてもらっています(笑)」この日も劇場は大繁盛。
「お気に入りの定食屋さん」
こちらは子供のころから通っているという同級生の家の定食屋さん。
昼間から飲むのが十条スタイル。まわりのおじさんたちは全員できあがっています(am11:30)。お店に入った瞬間「EXILEが来たぞ!」というおじさんたちからの野次(?)が。
そんな言葉にも爽やかに「髪型が少し違いますね」と答える啓弥さん。
「ちなみに全員、初対面です。こういうやりとりは日常茶飯事なので慣れました(笑)」
行く先々で声をかけられ、その度に丁寧に挨拶する啓弥さんはシティボーイの鏡でした。
「シティボーイメシ」
おすすめは、まぐろ丼と最近ではあまり見かけないほどの真っ赤なウィンナー。どちらもシティボーイが好きそうなメニューです。ちなみにナポリタンは400円!
幼なじみのお母さんとは大の仲良し。
「小さいころからお世話になっているんです。このあたりではおもしろくて有名なお母さんなんですよ」
「実家のネクタイ工場」
実家のネクタイ工場は、啓弥さんのおばあさんや昔からかわいがってもらっているおばさんたちがいるので、落ち着ける場所だとか。
「僕のおばあちゃんは、60年以上手作業でネクタイを作り続けている職人なんです。今でも現役で作っているのですごく尊敬しています。大手アパレルショップなどの受注を受けて作ったりしているんです」
「お父さん」
2代目のお父さんは会社運営全般に加え、ネクタイの直しなども行う職人。話を聞くと、30年前のポパイのスナップ特集に出たことがあることが判明! 親子揃ってシティボーイでした。
「親父は昔から服好きなので、今でも昔着ていた洋服をもらったりしています」
お父さんのおさがりを着られるのは、2代目シティボーイだからこそできる技。
「ネクタイの締め方はいつのまにか覚えていましたね。ちゃんと溝も作れますよ。悪いネクタイだと溝ができないんですよ。ちなみにうちの工場のネクタイはちゃんとできますよ!」
「野田秀樹」
今、なにより興味があるのが野田秀樹さんの演劇だという啓弥さん。
「昔は映画が好きだったんですけど、3年前に野田さんの舞台を見たときに、映画よりおもしろいものがあるんだって初めて感じたんです。それから劇場でバイトを始めて、毎週いろいろな舞台を見るようにしているんですが、そのとき受けた衝撃は未だに忘れられません。野田さんが書いた本やインタビューを順番に読んでいるところなんですが、読めば読むほど自信がなくなりますね。自分とは違いすぎるって(笑)。でも、これからもずっと研究していきたいんです」
「悩むシティボーイ」
現在大学2年生の啓弥さんは、将来のことについて考え中。
「ぼくが工場を継ぐころは、職人さんとかを新たに探すのがすごく大変だと思うんです。でもあの技術と場所はなくしたくないなと思っていて、なんとか自分でも運営できる方法を考えているところなんです。昔からファッションは好きなので、工場の技術を生かして自社ブランドを作ったりするのにも興味があります。そのために、自分なりにいろいろなものを見ておこうと思っていて、演劇もそのうちのひとつですね。そのうち舞台衣装などを作れるようになったらおもしろいなとか考えたりしてます。まだまだ、妄想しているだけなんですけどね」
古き良き物を大事にするけど、新しいものにも興味を持つ姿勢がシティボーイらしい。
将来について真剣に考え、悩み続けている姿を見ていると応援したくなる啓弥さんでした。
取材/写真/文/宮本 賢