profile:にしの ゆう。出版社に勤めたあと、世界のあちこちに旅行に出る。2011年、下北沢のある物件を紹介されたことを機に『ピリカタント書店』のオープンを決断。◯東京都世田谷区北沢2-33-6 2F ☎03・6804・8150 18:00~24:00火 15:00~24:00水木金 13:00~24:00土日 月休
近頃、東京では代官山の蔦屋書店のように、トークショーやカフェサービスなども楽しめる本屋さんや、ZINEだけを取り扱ってる本屋さんなど、それぞれテーマを持ち、新しい本の楽しみ方を提案する本屋さんができています。このブログでは、かけだしライターの私、宮本 賢がそんな本屋さん訪れて取材。本を読むこと、探すこと(=Diggin’ Books)のおもしろさを教えてもらおうという企画です。インディペンデントでかっこいい本屋さんにいる「本のスペシャリスト」に会いに行ってきます。「Diggin’ Books」毎月更新!
下北沢で開店準備中のご飯が食べられる古本屋さんがあるという噂が。“ピリカタント”という不思議な店名も気になるのでオープン前にお邪魔してきました!
もともと出版社に勤めていらっしゃったんですよね。
「4年間くらい出版業界で働いていたんです。最後のほうは料理や暮らしまわり関係の本を中心につくっていました」
どういった経緯でお店をオープンすることになったんですか?
「2年くらい前に出版社を退社して、アルバイトをしながら世界中を旅行していたんです。そのときに、いろいろな人の暮らしや景色など美しいものをたくさん見て、そういうことが伝えられる場所があればなって思って。そのときちょうど、ここが空くよって教えてもらって、なにも考えずに決めちゃいました(笑)」
やっぱり料理の本が多いんですか?
「基本的には旅と暮らしの本が多いですね。あとは、明るい気持ちにしてくれる本を置くようにしています。暗い本が嫌いなわけではないんですが、この場所では夢とか希望が詰まっている物だけを置こうと思っていたので」
ありそうでない選び方ですよね。
「本とか雑誌の持つ、違う世界や価値観を見せてくれる力はすごいなって思っているんです。ここにある物は、どうせなら読み終わったあと、美しいとかリラックスとか楽しいっていう気持ちにさせてくれるものを選びたかったんです」
本以外にも雑貨などを置いているお店はありますけど、ご飯が食べられるのは珍しいですよね。なぜ本以外のこともやろうと思ったんですか?
「ここのテーマが“本から広がる世界”なんですけど、日用品も食べ物もこの空間も良いものを伝えたいって意味では同じだと思っていて」
どのような方法で伝えているんですか?
「日本の本当においしい野菜を食べてもらうワークショップをやったり、お店に置いてある本のレシピを再現して作ったりというイベントをやろうと思っているんです。10月中は、ごはんとくらしをテーマにした『アノニマ・スタジオ』の本から料理を選んで作っています」
食事はどういったメニューがあるんですか?
「メニューは決めないで、季節のおいしい食材を使って作るというのがテーマなんです。夏はタイ料理、冬は煮込み料理とか期間によってメニューを変えてやりたいなと思っているんです」
ピリカタントっていう名前が印象的ですよね。
「ピリカタントはアイヌ語で『美しい今日』っていう意味なんです。私が北海道出身なので昔からアイヌ語が身近な存在だったんです」
今は、準備中なんですよね。お店はいつオープンするんですか?
「今はプレオープン中です。11月のはじめころにオープンするので是非来てさい!」
それでは、今回も本を掘って行きます!
1st DIG イタリア料理の本/米沢 亜衣
「この本の2冊目は、私が編集を担当したので思い出深い本なんです。料理研究家、米沢 亜衣(現 細川 亜衣)さんの素材を生かしたシンプルな料理が素敵なんですよ。食の本質に基づいた考え方がすごい好きなんです」
2nd DIG 全ての装備を知恵に置き換えること/石川 直樹
「石川 直樹さんが気球で旅をした話とか北極から南極まで旅をした話などの記録が書かれているんですけど、この本を読むと、なににでもなれるんだと思えるんですよね。実際に、石川さんの『今を生きるという冒険』という本を読んだあとにトルコに旅行に行って、お店をやってみようと決めたんです」
3rd DIG at Home/Yoshihiko Ueda
「写真家の上田 義彦さんが、妻の桐島かれんさんと家族との日常を記録した写真集です。普段の生活の1コマを撮っているんですけど、それを眺めていると何気ない時間のの愛おしさや大切に気づかせてくれるんです。あとがきも素晴らしいので是非読んでほしいです」
知らない世界を見たり、新しい価値観に出会う方法は、なにも旅行に行くだけではない。
下北沢のビルの2階にある小さな本屋さんに行くのもひとつの方法だ。
世界の料理や、おもしろい本、素敵なオーナーにも出会ったりして、旅行に行くより刺激的かもしれない。
取材/文/写真/宮本 賢